育ちの根っこにこだわろう(子ども一人ひとりの育ち)

令和元年度のたんぽぽは、集団を苦手とする子どものことについて書かせてもらっています。
少し前の中央研修会で、保育行政の動向について学んできました。説明されたのは、内閣府のバリバリの中央役人です。その方にも5歳のお子さんがいて、「私も今回の保育料の無料化の恩恵を受けています。」と話され、また、療育も受けているので、それも無料になったと話されました。集団を苦手とする子どもが増え続けていることは、毎回この紙面でお知らせしているのですが、中央官僚の方も支援センターを利用されているんだとわかりました。集団が苦手な子どもは、3歳以降の集団教育が学びにつながりにくいので、3歳までにその子に合った療育・支援を受けるというのが当たり前になってきたということです。集団を苦手とする子どもは、その心配があると思われる子どもを含め、6人に一人はいると言われています。子どもが集まるところには、必ず、集団を苦手とする子どもがいるということになります。
なぜ こんなに増えているかは解明されていません。しかし、興味深い説があります。一つは環境ホルモン説です。にほんミツバチの数が激減しているというニュースを耳にした方もいらっしゃるかもしれませんが、蜂社会というのは、蜂の1匹1ぴきの役割が決まっていて、ハチ集団を営んでいます。ところが、農薬のある成分がこの蜂の脳を集団に参加しない蜂に変えてしまうのだそうです。農薬の成分が、集団を嫌うという症状を引き起こしているようなのです。発達障害が増え始めた時期と、この成分を含む農薬の使用時期と一致しているそうですから、きちんとした解明が待たれるところです。
もう一つの原因としてハッキリしているのは、子どもの脳の成長発達の仕組みです。生まれてすぐ立ち上がる動物と違い、人間はずいぶんと未熟な状態で生まれてきます。人間の赤ちゃんは、生後1年間の間に、しっかりと目線を合わせたり、やさしく語りかけられたり、欲求に適切に応じてもらうことで、愛着形成を築きます。虐待とまではいかなくても、無視されたり、怒鳴られたりすると、脳の偏桃体という部分が小さくなります。この偏桃体が退化してしまうと、集団や社会と関わることができない、又は嫌うようになるとのことです。乳幼児期に大人との十分なやり取りがないと、発達障がいに似た症状が現れることは、わたしたちのこれまでの経験からも納得いくことです。子どもは、日々成長します。集団での関わりが十分にできないと成長できません。療育(支援)を受けずに放っておくと、他の子どもとの成長差がどんどん広がります。
そんな時は、次の成長のステップを考慮して丁寧に関わる特別な支援(療育)を受けることをお勧めします。支援のスタートが遅れれば遅れるほど、取り返しが難しくなります。集団が苦手というのは、その子の個性であり、その子が一生付き合う課題でもあります。保護者をはじめ、その子を取り巻く人々の理解と協力も得なければなりません。子どもの気になること、みんなで一緒に考えてみませんか。(続きは次号へ)