子育てに絵本を

「おーい父親という本を執筆している汐見稔幸先生は、「乳幼児期の言葉と文字を考えるにあたって」の中で次のように書いています。言葉が発達するとは、子どものどのような力がどう育っていくことなのか?

言葉を身につけると、1、自分を取り巻く世界をより深くとらえようとする力が発達する。2、自分の行動をコントロールする力が発達する。3、体験していないものをとらえる力が発達する。つまりイメージできるということ。4、自己意識が発達する。つまり意思決定です。5、他者との関係を築き上げる力の発達するの5つだそうです。自分自身の内面を深くとらえ、自分をコントロールする力が育つということは、自立心・自制心が育つということです。(反対に、言葉の力が育たないと、自立心・自制心は育たないということ)

目の前にないこと、目に見えない内容を「ことば」としてイメージ化し、それを組み合わせる力が発達することが、読書の力を育てることです。もう一つ「思いやりの心」を育てることにもなります。相手が何を望み、何を悲しく思っているか、相手の気持ちを想像するということ、すなわち、目に見えない相手の心を汲むということだと思います。自分は、相手に対してどのようにするか考えることができるのです。これは、社会の中で生活していく人間にとって、一番大切なこと「思いやり」「やさしさ」ということではないか、このことがわかるのは、「ことば」の発達があって育つということに、是非気付いてほしいのです。言葉をたくさん知っていることではなく、ひとつひとつのことばを組み合わせて、目に見えないものでもイメージできることです。聞いたこと・見たものをその言葉のまま取り入れるのではなく、それを総合的に受け止め、考える、それが本当の「ことば」の力です。

「白クマちゃんのホットケーキ」(作者わかやまけん)のなかの、「ぽたあん、どろどろ、ぴちぴちぴち、ぶつぶつ、やけたかな、まあだまだ‥‥」の「ことば」はリズミカルです。読み手も心は歌うように語ると、子どもはこのことばのリズムと響きを心地よくとらえ楽しみます。

この本は、園での集団読み聞かせでより家庭読書の方がより子どもに心地よく感じられるようです。家庭でのできごと 自分の生活と より結びつきやすいことが、園での読み聞かせとは異なるのではないかと思うのですが…。ホットケーキだけでなく、お好み焼きの時もやっぱり「ぽたあん、どろどろ、ぴちぴちぴち、ぶつぶつ‥‥。」この文章を読んだだけで、その情景が浮かんできませんか。ただこれだけの文章だけど、ことばの力が感じられます。