子育てに絵本を

岡本夏木先生の「子どもと言葉」の中に、子どもの言葉の獲得過程について、「外的刺激の機械的影響として受け取るのではなく、子ども自身が自分の能動的な活動を通して、自分のものとしていくところが発達である。子どもはオウムとしてではなく、自分の活動を通して、選抜して自主的に言葉を使い始める。」と書いています。(子どもの)自己活動である言葉の取り入れ活動が根底にあるからこそ、自分の言葉を様々に用いながら、創造的な言葉の世界を開いていくのでしょう。

そして、言葉の獲得には、身振りや鳴き声、喃語もコミュニケーションの手段なので、子どもは自分が使える感覚運動の動作を総動員して、他人との交渉手段にしていくとも言っています。「あーあー」などの喃語を言ったりする非言語的コミュニケーションは、言葉の獲得の準備体制なのです。だから、子どもは、これにも応えてもらえるととても嬉しいのです。言葉の獲得は、子どもの能動的活動なのです。

言葉の働きは、自分の気持ちを相手に伝える伝達の働き、次に ものを考える働き、ものを認識する働き,そしてなにかを作り出す創造の働きです。小学校に上がる時、お話しをじっと聞ける子は、「ことば」がわかる子どもです。聞いた言葉の物を頭に描き、その描いたものを組み合わせながらものを考えます。言葉がわからないと、先生の話が聞けません。だから チラチラと落ち着かなくなります。子どもは生まれつき落ち着きがなくなるようにはなっていません。落ち着きは、育つ家庭で育くまれていきます。「早くしなさい」といくら言っても、どこか子どもの頭の上で騒音のように聞こえていて、おとなはどこかに向けて言葉を投げているのだと思います。子どもの顔を見て、静かな声で話しましょう。絵本を読んであげているときのように、落ち着いた声で言葉を話しましょう。

子どもに本を読ませたいとみんな思っています。どうしたら本を読むようになるだろうか、どんな本がよいだろうか、どんな時に読ませたらいいだろう? でも、本を読ませる特効薬はありません。本を読むという行動は自発的・意欲的な行動です。何かを求めようとする好奇心がなくてはできません。いつも親から「こうしなさい」「ああしなさい」と命令されて育てられている子どもは、好奇心が育ちません。自ら未知のものに手を伸ばそうとする意欲が好奇心です。何かに驚く環境、疑問や矛盾を持つ知性が必要です。そして、子どもに「ことばの力」と「創造の力」が育っていなければならないのです。

次月号では、「言葉の力」が育つということについて、述べたいと思います。