子育てに絵本を

先月号に、『子どもは、同じ絵本を繰り返し読んでもらっているうちに、「ことば」から頭の中にイメージを描き、絵本の中の絵と共に、想像の世界をどんどん広げていく。「ことば」を耳から聞き、「絵を読んでいる」子どもは、絵本を積極的・主体的に読んでいる。』と書きました。

「繰り返し読んでもらう」ことが乳幼児期にはとても大切です。2か月以上同じ本を借り続ける子どもがいます。その子のお母様は「お母さん その本、もう飽きた、他の本にして!」と言っておられました。子どもは大人と違って、何回も新しい発見ができるのです。どんどん読み込んでいくので、イメージもどんどん大きく膨らんでいきます。何回も読んでもらうことで、その本の中の言葉を、深く理解し、認識していきます。昨日聞いた言葉と、今日聞いた言葉の意味合いは少しずつ違っているのです。

ところが、反対に、保育者が本を読もうとすると、『その本、見たことある』と、必ずといっていいほど云う子どももいます。そんな子どもは、あらすじを知っているというだけで、ことばを聞いてイメージを広げられていない、つまり、単に受け身であり、本を積極的・主体的に読んではいないのです。

読み手の思いを言葉にのせて読んでもらった子どもは、読み手との信頼感を築くことができます。いじめを苦に自殺という事件が発生しました。いじめられていることを親にも誰にも言えない。自分だけでずーっと抱え続け、そして気持ちが切れてしまうのです。でも、親子読書は作者の言葉を借りて、親の思いを伝えるのです。誰にも言えないような苦しいことも、親を信じればこそ信号を出して助けを求めることができます。想像力が育っていないと前向きになれませんよね。

人間関係はことばで成り立っています。教育は、親や先生の言葉を信頼できる関係が子どもとの間にできなければ、成り立ちません。

本を読み込むことができた子どもは、積極的主体的に取り組むことができます。子どもの学びは遊びの中にあります。園では、子どもに遊びを与えるというより、環境を用意することで、自ら遊びを生み出すようにしています。馬鹿馬鹿しく見える子どもの動きも、何かを試しては、納得できるまで繰り返し、そして「考える」を繰り返しています。そのためには、十分な遊びの時間と空間、そして仲間が必要です。大人に細かく干渉された子供は、理屈はわかっても、心は納得できていません。自ら遊びを組み立てる子どもは失敗すると落ち込みますが、納得できるのです。特に男の子にその傾向が強く、自分で体験しないとすっきりできないようです。

思うようにいかないのが子育てです。でも、子どもは、前に進むのが仕事。いつも前向き、できるようになりたいのです。乳幼児期の今は、人格形成の基礎作りの時期です。たくさんのことを教え込まれるより、自ら色んなものを納得して体の中に入れ込み、学童期以降に発揮していきます。

健診等で「言葉が少ないですね」と言われて心配される方がいらっしゃいます。学びに言葉はとても重要です。でも言葉の獲得にも自発的な遊びが大切です。教えられて言葉を身に付けるわけではありません。次月号では、子どもは言葉をどのように獲得していくのかについて述べたいと思います。