朝夕の登降園時の親子の様子を見ていると、子どもの後ろから話しかけることが多いですね。叱るときも、指示するときも、子どもの背中に話していませんか。お母さんと子どもの顔と顔が向き合ってから、ゆっくり、短くわかりやすい言葉で伝えましょう。そうすると人の話が聞ける子どもになります。
育児書を見ても、病気のことや離乳食のことなど、目で見てわかることには対応できるのですが、他人と関わる力はどのように育まれていくのか、こうすればいいと具体的に書かれているものはありませんし、それを実践しようとすると、ノイローゼになりそうです。
前月号にカルタ取りのことを書きましたが、文字を覚える時期に「いつがいい?」はありません。遊びながら覚えていくのが一番です。覚えるだけなら2歳児が得意なのですが、ただ覚えるだけでそれを活用するのはもう少し先なのです。3歳は、遊びの楽しさがわかり、友達と競い合ったりふざけ合ったり喜び合ったりできるのと、ルールがとても簡単で、ほし組さんの発達段階にぴったりです。是非、付き合ってあげてください。子どもの自信につながり、次への挑戦の力絶大です。
でも、この遊びができない子どももいます。それは人と関わる力が弱い(共感性が乏しい)子どもです。友達が絵札を取ろうとしただけで我慢できません。ルールが理解できないのも人と関わる力が弱いからです。このように、発達が遅れているというのではなく、人と関わる力が弱いために、言葉の遅れや、考える力の発達が遅くなるのです。人と関わる力の基礎は1月号に書きましたが、0歳から2歳の時期に基礎ができます。この時期に「親子読書」が大切なのです。話のあらすじを理解できなくても、信頼できる大人と同じ世界を楽しむことがとても大切なのです。余談ですが、この時期に親子読書(読み聞かせ)が少なかった子どもは、ストーリーの理解や想像力を働かせることが苦手です。手順良く作業したり、人の気持ちを推し量ったり共感したりできません。5歳過ぎても「だるまさん」シリーズしか興味がない子どももいます。これでは国語の勉強は面白くありません。
人と関わる力が弱いとこだわりや思い込みが強くなり、他人とうまく付き合えず、ますます発達が阻害されます。無理な集団での活動は、ますますこの困った症状を強くし、二次障害となってしまうこともあります。特別な支援を受けるということは、発達の順序を理解している大人が、その子どもの発達段階を見極めたうえでその子供の良さを認め、肯定感をもって丁寧に関わり、次の発達段階へ導いていこうとするものです。この丁寧な関わりのないまま5歳くらいになると、症状がぐっと顕著になってきます。
私たちが目指すのは、普通学級に行けることではなく、社会の中で自立できる力を養うことなのです。支援を受けるのは早い時期ほど効果があります。遅くても、3歳までに支援が受けられるよう、療育支援センターと連携して、支援を受けられるようお勧めしています。3歳はとても大きな節目です。