ブックスタート運動の対象はなぜ0歳児かというと、乳児検診を利用することで、すべての赤ちゃんにブックスタートのメッセージを伝えながら絵本を手渡すことが可能だからです。絵本を通したコミュニケーションは赤ちゃんの健やかな心の成長のために大切な役割を果たしているのです。心の成長に大切な役割とはどのようなことなのか?一般に子育てに一番大切なのは、身体で触れ合うスキンシップと、目優しく答えてくれる…赤ちゃんにとって、このうえなく心が安らぎ、幸せに満たされる瞬間です。絵本は単に物語の世界に導くというだけでなく、実は赤ちゃんにとってこのような大切な役割があるのです。このことは0歳だけでなく、1歳以上の子どもにとっても同じで、安らぎ、幸せに満たされる瞬間であることは言うまでもありません。
一方絵本は、親にとっても赤ちゃんとの絆をつなぐうえで大きな役割を持っています。ちょっとお母さんの1日を思い浮かべてみてください。炊事・洗濯などの家事のほか育児に追われ落ち着いた時間が持てていません。赤ちゃんに対しても同じで、世話はするけれど、子どもの様子や変化をゆっくりとは見ていないのでは?確かに結構一緒にいるけれど、じっくりと向き合っている時間は案外少ないことに驚きませんか。このような問題も絵本はちゃんと解決してくれます。それは他の一切のことを忘れ、親子でゆったりと絵本を楽しむのです。赤ちゃんに心を込めて絵本を読んであげることで、親の思いが赤ちゃんに伝わり、赤ちゃんはそれに対して足をバタバタさせたり、にこにこしたりして心を表します。このように絵本を通して気持ちを通わせることで、親子の信頼関係は育まれ、強い絆ができあがっていくのです。
絵本というと、「言葉を早く覚えさせたい」とか「読書好きの子になるよう」とか「集中力をつけさせたい」といった教育的な目的でとらえがちです。確かに、絵本に長く触れ合っていくうちに、そのようなことがでてくるかもしれません。しかし、本来赤ちゃんにとっての絵本は、ブックスタート運動で掲げられた趣旨と同じように、お父さんお母さんと赤ちゃんが一緒にゆったりとした時間を過ごすための素敵な道具なのです。そんな絵本を使って、たっぷりスキンシップを図ってほしい、親子読書会の最初の趣旨を忘れないようにしたいと思います。