「ちょっとだけ」という本の中に、「ママ、ちょっとだけ だっこして‥」となっちゃんがお母さんにお願いする場面があります。赤ちゃんが生まれて、お母さんは赤ちゃんにつきっきり。お姉ちゃんになりたてのなっちゃんは、何でも自分でやろうと頑張ります。ある日、一人で遊んでいたなっちゃんは一人で家に帰るのですが、疲れて眠くてたまりません。なっちゃんは、お姉ちゃんだからと お昼寝しちゃダメと頑張ります。でも、睡魔には勝てません。段々と目が閉じてきそうになり、ふっと出た言葉が「ママ、ちょっとだけ だっこして‥」
お母さんは優しく笑って「ちょっとだけじゃなくって いっぱいだっこしたいんですけど いいですか。」と。なっちゃんは、ママの匂いをいっぱい嗅ぎながら、いっぱいだっこしてもらいましたというお話です。
こども園のこどもたちを見ていると、こんな場面がたくさんあります。例えば、弟妹が病気がちだったり障害があったりすると、上の子どもはなっちゃんと同じように、我慢しようとして頑張っています。でも、本当は時には抱っこしてもらいたいのです。「お姉ちゃん(又はお兄ちゃん)はしっかりしているから大丈夫。」と思い込んでいる場合もあります。でも、子どもだって思い通りにならないことはたくさんありますし、いっぱい我慢もしています。就学が近づくと、何となく不安になって、時に八つ当たりしたり、下の兄弟をいじめたり、めそめそしたりします。「お姉ちゃんだから我慢できるよね」で済ませないでください。
そんな時、ちょっとだけでもいいのです。1対1の時間が大切です。だから、親子読書を実践してほしいのです。知識を身につけるためにではなく、子どもが自分を肯定し、次の1歩を踏み出すことができる、つまり自立へと1歩進めることができるのです。子どももちょっとだけ我慢することで成長します。
乳幼児期に大切なことは、「自分が自分らしくあることを大切にされること」言いかえると、「愛された実感が持てるようにかかわってもらえること」だと思います。
私たちおとなはどうしても、ついつい「できた・できない」で見てしまいがちです。「できないこと」や他の子と比較して遅いことが気になるのはよくあります。我が子をかわいいと思っていても、自分の思い通りにいかないことに対して叱ったり、苛立ったりすることが多くなり、時には人格を否定するような、叱り方をしてしまうことがあるかもしれません。親とはそういうものです。ただ、子どもにとって他の子どもと比較され否定的に言われることほどつらいものはありません。大人だってそうです。夫から「よそのママは‥」と言われたら、きっと傷つくはずです。そう言われても変われないのです。
親子読書は、子どもをありのままに受け止める時間です。きっと自尊感情や自己肯定感が育まれ周囲の世界にポジティブに向き合っていくはずです。