「ころころころ」という本があります。この本を読むのはとてもむつかしいです。とにかく「ころころころ」が続くのです。淡々と読んでもいいのですが、階段をころころの場面では玉の気持ちになって弾むようにとか、明るい坂道では軽やかにとか、暗い場面では低い声でとか、こんな感じかなと思って読んでいました。この作者の絵本の作者である元永定正先生が「この1冊は人生を表している」と述べておられました。人生には明るい、楽しい道がありますが、でこぼこ道もあります。険しい道もあれば、北風の吹く道などいろいろです。へーぇ、すごい本なんだと、絵本作家の思いに触れた気がしました。初版は、こどものとも社の月刊誌です。毎月、皆さんが購入されているわずか400円余りのあの月刊誌です。今でも版を重ねている素敵な絵本です。
もう一つ、「おおきなかぶ」の絵本はご存知だと思います。小学校の教科書にも掲載されていました。絵本の「おおきなかぶ」と、教科書の「おおきなかぶ」は同じ文章です。でも、ある子どもが「絵本の方が好き!」と言いました。絵本は場面をめくると、絵のかぶがどんどん大きくなっていくのがわかります。でも、教科書は文字が主になるため、ページをめくっても、絵は物語を語っていません。かぶが段々と大きくなるという変化を見てとれません。乳幼児期の子どもたちは絵を読むのです。絵が語らない絵本は意味をなさないのです。
子どもは「絵本」の中の主人公が成長する姿に共感し、読んでいる子ども自らが明るい希望を見出しているんですね。「絵本読んで!読んで!」と楽しんでいるようです。子どもが成長するためには、⓵目覚めというか気づきや発見のきっかけが必要だということ。つまり、子ども自らの活動であることです。周囲から言われ、命令されていやいやながらやったことは成長ではないというです。次に、⓶成長を遂げるには、友だちが必要、つまり人と人の関わりの中で多くを学び、自分が新しく変わっていくことです。⓷美しいものに深く感動する経験が大切。そして、④古い自分を捨て、新しい自分によみがえることが必要、つまり変わることへの勇気みたいなものでしょうか。
林明子さく「はじてのキャンプ」をご存知ですか。「重い荷物も持てる」「夜も怖がらない」と意気込んで参加した初めてのキャンプ、でも、みんなが寝てしまってからおしっこに行きたくなった主人公、だーれも気づいてくれません。キャンプに連れてきてくれたおばちゃんがいいのです。本当は気づいているのに寝たふりしてるんですね。主人公が本当に頑張ったとき、「えらかったねぇ、もう一人前」と優しく言います。成長できる環境を用意するのは大人でも、そのチャンスを子ども自身がどうするかを決める、自発的に行動する、流れ星を見て(美しいものに)感動する、子供は以前の自分より成長したことを感じ取る、つまり、自信を得るというストーリーになっています。この絵本を注意深く見てみると、子どもが成長するとはこういうことなのだと納得できますよ。