前月号に、三項関係について述べました。1歳半健診を受けられた方は、「指差しがありますか⁈」という質問をきっとされたかと思います。これは知能をはかるというより、人と関わろうとする芽生えがあるかを確かめているのです。子どもの社会性の芽生えの出発点は、親子の関わりなのです。
子どもは(大人もそうなのですが)今よりもっとよくなりたいという欲求が強いです。ですから、色んなものに興味関心を持ち、試してみようとするのです。ただ未熟な故にちっともうまくいかなくて、大人の望まない結果になってしまっているだけなのです。いつも、叱責ばかりだと、この良くなりたいという欲求を持たなくなる、つまり意欲を無くする、そして、周りの刺激に反応して行動するようになり、そこでさらに叱責を受けることになり「発達障がい」ではないかと疑われることにもなりますし、そのまま放っておくと、脳が発達障がいと似た症状になってしまうことがわかってきました。そしてさらに困ったことに、このような子どもは、異常にゲームにのめり込むのです。現在、ゲーム脳が社会問題になりつつありますが、スマホが子どもに与える影響について、医師会が警鐘を鳴らしています。県内でも、小児心療内科の医師たちが、たくさんの症例から、乳幼児にスマホやゲームを含むメディアによる乳幼児への悪影響について発信しています。
さて、話は三項関係に戻ります。子どもの指差しはそれまで受け身で過ごしてきた赤ちゃんからの初めての外界への具体的働きかけなのです。子どもは外界に働きかけ、その反応や変化を敏感に感じ取り、自分なりに考えて反応し、妥協したり拒絶したりと、自分なりに折り合いをつけていくことになるのですが、その過程には、うまくいかない葛藤を大人の何十倍も抱えながら乗り越えようとしているのです。この行動は生後10か月のころから芽生え始めますので、それを支える大人の気づきが必要です。おっぱいやミルクを飲むとき赤ちゃんは必ず飲ませてくれる人を見つめるのですが、最近ではこれに気づかない人が多いそうです。このことも、言葉の出が遅かったり、集団での活動がうまくできない子どもが増えてきている原因の一つかもしれません。集団での活動が苦手だったお子さんが最近療育を受けられるようになりました。支援センターから子ども園にとても機嫌よく帰ってきます。子どもの満足した笑顔に私たちは安心し、「この子に合った支援がたくさん受けられた」ことが私たちにも伝わって、私たちもとてもうれしくなります。集団の中ではなかなかうまくいかなかったのですが、個別の対応によって、子どもは十分受け止められ満足できたのです。巡回相談に来て下さった大学の先生から、「周りの子どもたちにも影響が見られます。」と忠告されました。集団が苦手な子どもを集団の中だけで過ごさせることは、その子どもたちが辛い思いをし、これからの成長を歪めてしまう心配だけでなく、そうでない他の子どもの成長にも影響を与えるということ、一人ひとりの発達をしっかり見ていくことの責任と支援につなげる大切さを感じた8月でした。支援を受けることは特別なことではなく、その子に合った支援(対応)を受けることで、その子が持つ困り感を軽くして、良さを伸ばしていくことです。支援は、発達の節である1歳半、そこで気が付かなければ、3歳までに受けると、効果があります。入園説明会でお話しした症状のある方は、是非ご相談ください。お子さんのより良い将来を一緒に考えましょう。