……葛藤してそして成長する子どもたち……
11月25日、指宿市図書館大会(社会教育フェスティバルと同時開催)が開催されました。椋鳩十先生のお孫さんである久保田里花先生の講演がありました。椋先生は、20年ほど教職に就き、県立図書館の館長を20年ほど勤められました。本格的な作家業はその後のことです。この館長時代に、優れた文学に触れることの大切さを訴え、図書の充実に取り組むとともに、親子読書運動を始められました。ちょうどその時期に、指宿市立図書館に勤務していた前園長が、指宿市初の親子読書会の設立に関わったと聞いていましたが、その読書会の発会式で椋先生が講演されたそうです。なのはな館の講演会場入口にその時の写真パネルが展示されていました。椋先生と共に、前園長の堀口盛太郎と当時の指宿市教育長が写っていました。子どもに優れた絵本を!と、保育園開始とともに本園の親子読書会が発足したのが納得でき、私たちの読書会の歴史を感じることでした。
しかし、発会当時、日本には子どものために作られた絵本はほとんどなく、外国の絵本の翻訳物くらいでした。当然 指宿市内の本屋に子どものための絵本は販売されていませんでしたので、子ども60人分の絵本や童話を60冊、県立図書館から椋先生のご厚意で貸していただきました。今でこそ巡回文庫は当たり前になりましたが、当時では、とてもむつかしいことだったようです。その当時の園児の保護者の記録を見る機会があったのですが、本物の子どもの本に出会えた喜びと感謝が綴られていました。
椋先生の本名は久保田でしたので、久保田家のお孫さんであった里花先生は、おじい様からたくさんのお話を語っていただいたそうです。お風呂では、よく海坊主の話を語ってくれたそうで、海坊主に海の中へ引き込まれたふりをしてふろの中へ潜っていき、お孫さんを慌てさせたそうで、助けようと大騒ぎしたとのこと、この遊びを何回もして、そのたびに、お孫さんは濡れ身体のまま風呂から飛び出し助けを求め、家じゅうを水浸しにしたそうです。それを銭湯でやったときは、周りのお客さんまで巻き込んで大騒ぎになってしまったとのこと。でも、お話は楽しいことが一番、感想文のためにとか、強制的に読まされることは意味がないとおっしゃっていたそうです。子どもは想像力が豊かで、そのイメージを膨らませて楽しむことが、子どもの心情を豊かに育てると語っていたとのこと。
つちはしこども学園の子どもたちは、お話や読み聞かせが大好き。園での読み聞かせはもちろん集団に対して行われるのですが、ドキドキや嬉しい気持ちなど共感しあうことで、さらにお話の内容が鮮明になり、より楽しむことができます。夕方のお迎えが遅いとき、ちょっと寂しい様子がうかがえるときの読み聞かせは、保育者が子どもに体をくっつけて絵本の読み聞かせをします。子どもはすぐにお話の世界に入り込み、イメージを膨らませ、心が落ち着いていきます。集団での読み聞かせと個別での読み聞かせの両方を体験することで、読み慣れた聞き慣れたお話でも毎回新しい発見をしている子どもたちです。子ども一人ひとりに好きな絵本があって、それを読んでもらう喜びは、乳幼児期の今でなければ体験することはできません。この体験をした子供とそうでない子供の心の成長の差は、十数年後に現れます。