集団の中での子どもたち

……葛藤してそして成長する子どもたち……

就職して数日後、雨が降っていた、何となく無断欠勤、そのまま退職。遅刻を繰り返すので上司が注意、2週間後に『もう辞めます』。もっとわからないのは、就職してみたけど職場の雰囲気が自分と合わないと辞めてしまう。こんな話はまだまだあるのですが、共通しているのは決して先の見通しがあって仕事を辞めているわ
けではありません。指示待ちと言われる若者ですが、それは、自分の都合のいいようにやさしく指示してくれるのを待つということで、自分の失敗や落ち度を指摘されることを極度に嫌う傾向があるようです。幼児期の子どもに接する人たちから子どもがおかしいと言われ始めました。新入園なのに親と別れても泣かない、表情が乏しい、泣き方が弱い、笑わない、走らない、トボトボと歩く、部屋の中に閉じこもりがち、視線が合いにくい、身体が弱い、抱かれるのが苦手など、きりがありません。遊びの天才と言われる子どもの遊びが貧弱になっている、「遊ばない子ども」「遊べない子ども」の話題も以前から取り上げられ、変に大人ずれした子どもの姿が目に付くようになってきました。園によっては、管理的教育・保育をするところもあります。苦情を言われたくないから、怪我をしないように子どもを管理する、しかし、子どもに怪我はつきものです。子どもは何をするにも初めての経験ですから、最初からうまくできません。だからちょっとケガもします。でも、小さなけがを繰り返すことで、考えて繰り返して、身体を上手に使えるようになります。幼稚園・こども園等は集団活動ですから、自分だけでなく周りの状況にも気を付ける技が必要です。管理的保育の場では、小さいけがは防げても、ひとたび怪我が起きると大きなケガになりやすのです。何と言っても、管理的な関係の中では、保育者と子どもの距離が開いてしまうため、信頼関係は築かれません。最近の若者の姿は、管理的幼児教育の場から生まれたのかもしれません。私たち保育者の仕事は、子どもの人格形成の基礎作りです。そして自立した社会人に育つことです。字が読める・書けるといった目に見える現象だけにこだわると、子どもは結果だけにこだわるようになります。就学までに身につけたいもの、それは、学びたいという心です。AI時代を生き抜いていかねばならない子どもたちには、前に進むことが楽しいと感じてもらいたい、一人で抱え込むのではなく、議論したり、お互いの立場を理解しあって、着地点を見つけてほしいものです。そのためには、乳幼児教育・保育を通じて育みたい「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」【ア 健康な心と体 イ 自立心 ウ 協同性 エ 道徳性・規範意識の芽生え オ 社会生活とのかかわり カ 思考力の芽生え キ 自然との関わり・生命尊重 ク 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 ケ 言葉による伝えあい コ 豊かな感性と表現】を目当てとして、保育を創造していくのが私たちの仕事です。ああだよ、こうだよ、と教えれば、形だけはそうするかもしれません。でも、子どもたち自ら体験して学び取っていくのが幼児教育です。気の長い話のようでもありますが、私たちが目指すのは、自らの力で考え、決断し、実行する自立した社会人です。子どもたちの成長発達をしっかり見極めながら、主体的活動が生まれるよう環境を整備し、子どもが自ら学ぶよう援助する必要があるのです。その達成に向けて 保護者の方と一緒に取り組んでいきたい、子どもと共に伸びていきたいと思っています。子育ては共育て、そして共育ちがつちはしのモットーですから。